春の香がはこばれてきた

 今年もトモさんのお母さんから早春の香が運ばれてきた。先月はラッパ水仙、そして3月に入って沈丁花の花がお便りに添えられていた。

 トモさんのお母さんは毎朝3時頃から雨の日も雪の日も休まず新聞配達前の作業をされている。20年前出会ったときからずっと配達もされていた。最近はお連れ合いがお母さんの分も配達して下さるので、4時半頃には帰宅されるそうだ。わたしたちが眠っている夜明け前の空気は、生活の匂い人工の匂いが混じらないので、きっと草花の香が日中よりよけいに強く感じられることだろう。届けられた沈丁花の匂いを胸いっぱいに吸い込む。亡き父が愛した香であったことを思い出す。

 トモさんのお母さんは、新聞の作業を終えて家に帰られると、私の朗読CDを聴いてホッとしてくださるのが日課だそうだ。有難いことである。沈丁花の香をかぎながら、今年は新しい朗読CDを出そうと思った。