5月に届く贈り物

 5月の今ごろは、まだ母の胎内にいた。新緑の樹々に風が吹き、次々に花が開くこの季節が好きだ。中でも一番好きな5月の植物は欅の新緑。芦屋に、大きな欅が道の両側にアーチのように枝を延べあう長い長い並木道がある。連休の頃にここを毎日潜り抜ければ、どんな重い病を得ていても復活できるかもしれないと思うくらいの新鮮なエネルギーに満ちた緑のパワースポットである。

 その後、甘い香が一体の空気を変えて、ニセアカシアの花房が高い樹々から無数に下がる。生成り色の花は、香まで生成り。坂道に落ちて枯れてゆくニセアカシアの花殻から懐かしい干草のような匂いがたちあがる。ニセアカシアが散り尽くしたころ、樹に咲く花で私が一番好ましく思う花、センダンが咲く。楝(おうち)である。梅雨が近づいてくるような湿り気を空気が帯びはじめたら、センダンの花が突然背の高い樹の上で薄紫に煙っているはずだ。川辺につつましい目立たない花を咲かせているセンダンの姿は、儚げでどこか品がある。毎年生まれ月の樹や花を愛で、年を重ねてさせてもらっている。自然とともに日々を送りそこから喜びを頂く何気ない日常が、続くことを願って。